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ランニングがおもしろい
いまぼくはランニングをとても楽しんでいます。
自転車も楽しいけれど、ランニングも楽しく、また別のスポーツを実施する意味もあるので、今回は自転車とランニングの相違、あるいはサイクリストがランニングを始めるメリットなどについて考えてみることにします。
ランニングは自転車と比較して怪我をする可能性が断然高く、疲労に関してもシビアなので、うっかりすると故障してしまう可能性が高まります。実際、膝に痛みを抱えるランナーは多くいるようです。身体への負荷が高いので長時間運動することは難しい。長時間やりすぎると、故障を起こかねない。運動時間を長くとれないので、消費カロリーも少なめと、効率で考えた場合にはあまり良いことはありません。
自転車は関節への負担が少なく、低衝撃で長時間の運動が可能なため、リハビリや怪我予防を重視する人に適しています。「生涯スポーツとして最適」であると言われる理由がわかります。自転車は、特にロードバイクに関してはですが、ぼくが若い頃からプレイ人口の年齢層が高めでした。いまでも、自転車では”高齢化”がさかんに気にされていますし、「若い人の〇〇離れ」というパターンでアピールされるケースもみられます。
ランニングは特別な装備が少なく、はじめての人でも始めやすい(ランニングシューズがあれば十分)という特徴をもつのに対して、スポーツサイクルは比較的高価ですから、一定程度の経済的余裕を必要とします。また、自転車のメンテナンスや駐輪スペースも必要で、参入障壁がやや高いと言えます。とはいえ、自身の予算に対して無理をせず、身の丈にあった価格の自転車を選べば、身体への負荷の小ささから、多くの人に楽しんでもらえるでしょう。
ランニングでも、一足でいいはずのシューズが2足3足と増えていったり、新しいランニングウェアが欲しくなったり、ちょこちょことコストが必要にはなりますが、シューズも一足2万円前後で片がつきますし、自転車ほどの予算組みをする必要はありません。タイミングも欲しいときに買える程度にさっと買えてしまうでしょう。シューズに関しても、自転車とは異なり、「もし失敗しても買い替えが容易」ですし、「ちょっと上級向けの道具だけど…」とチャレンジも容易にすることが可能ですし。その際の失敗も受け入れやすいので、自己肯定のプロセスに無理が生じにくいと思います。
フォームづくり
自転車に加えてランニングをして実感したことは、「やはりスポーツで大切なのはフォームである」ということです。パワーでも、機材の軽さでも、サドルの高さでも、機械的抵抗の低減でもなく、動きのもとになる人間の動きこそがもっとも大切です。
自転車でフォームを作る際、身体が機材と固定されてしまうことで、身体が自由にならないというか、構造物化してしまう点が理由となり、フォームへの理解がうまく進まないように感じます。「軽量かつ高剛性な自転車を力強くペダルを踏めばいいのだろう」と思う人が多いと思いますが、それは違うと思います。ランニングをするとわかりますが、強く踏み込むのではなく、効率よく体重を移動して前進するのだと気づきます。ぼくもまだぜんぜんわかっていないレベルですが、強く地面を蹴ればいいのだろうと考えていたときには、無駄な力を多く使っていました。
自転車では、足が回っていれば上半身はどうでもいいとも思われている気がします。シンプルに、フォームの修正が難しいのが自転車なのかなという感じもします。自転車の寸法を変えても、結局同じフォームで走る人が多いからです。フィッティングする際、フォームの変更を目的として自転車の寸法を変更するのですが、人の動きはそう簡単に変わらないということを実感します。
ランニングでは、身体のどの部分も固定されていないため、自由にフォームを変更することができますし、そのフィードバックを即座に受け取ることができます。体感としてのフィードバックを、タイムで検証することもできます。
自転車を漕ぐ運動は全身使う運動であるものの、大腿四頭筋の収縮を中心とした動きであるのは確かなため、フォームが整わないうちにその部位に過剰にフォーカスしてしまうことが少なくありません。ぼくもそのうちの一人です。一方でランニングは、全身の筋肉(特に体幹、臀部、ふくらはぎやアキレス腱)を使用します。ただし、筋肉のバルクアップは期待しにくいので、体型や姿勢のバランスを崩す原因を作りにくいと考えます。そのため、自転車に乗る時間を増やすと抱える人が多い腰痛は、ランニングで起きることはあまりないでしょうし、むしろ、全身の筋肉をバランスよく使わないとよいランニングフォームを実現しにくいので、自転車に乗る人がランニングを併用するメリットは多いと思います。自分の体の癖や動きの質についての理解を進めるのにも効果的だと感じます。
ぼくにとってのランニング
ぼくはサイクリングとランニングを二項対立軸に乗せたいわけではありません。ランニングはコスト面での参入障壁が低いスポーツなので、セカンドスポーツとして、マルチスポーツを楽しみやすいと思います。
ぼくはランニングのどの部分を楽しんでいるのか、それは自己の成長を実感しやすい点です。走っている最中に得られる身体へのフィードバックが多いのでそう感じますし、手首にGARMINの腕時計を装着するだけで、1kmを何分のペースで走っているかということがリアルタイムで表示されます。もちろん、自転車と同様に風や傾斜の影響は受けるのですが、ランニングは足を止めて空走することができないため、数字と実態を比例させて理解しやすいと感じています。
自転車の場合、踏めてるか踏めてないかのところの再現性が低いというか、ぼんやりしている気がします。いまでも、走りはじめてしばらくしてから、「今日の自分はペダルを上手く回せているのかな?」と確認する作業には曖昧さを多く含みますし、数十キロ走る中でその確認をたびたびした際も、「できていたことがいつの間にかできなくなったり」、あるいはその逆が起きたりするので、どうにもわかりにくい感じはします。
逆に言えば、自転車はあいまいだからこそ多くの人が楽しめるのでしょう。客観的に見られる際も、よほど慣れている人でない限り、「上手くペダリングできているかどうか」は判断されにくいものです。傾斜や風の影響を受けるなどしつつ、同じ速度で走ってしまえば、「乗れている」と勘違いもされやすい。そうした”裾野の広さ”は自転車で行うスポーツの中でロードバイクが特に恩恵を受けやすい部分だと思います。
それに対して、ランニングはけっこうシビアです笑
たとえば、メディアで喋るような人びとが自己紹介を行う場合、「フルマラソンを◯時間〇〇分で走ります、〇〇です!」のように言うことがほとんどなんです。これ、けっこう不思議というか、自転車では裾野が広いことを土台にしている意識があるので、そうした発言を「マウンティングである」と捉えられがちですし、「ビギナー目線を設定に含めるインフルエンサー」がある程度の知名度や発言権を持ったりするので、こんなにも違ってくるのかと驚きました。正直、4時間を切れないようなランナーの発言は、誰も聞かないくらいの雰囲気はあります笑
とはいえ、ランニングでもソーシャルランのようなものもありますし、旅ラン(旅行先でのランニングを計画し、景観や文化を楽しんだり、大会参加を理由に旅をすること)も盛んですから、すべてのランナーがストイックな状況だけで楽しんでいるかというと異なります。ただ、やはりというか、「走らないと前に進まない」ので、身体が痛くて苦しいという状況を肯定的に受け入れ続けることができる人でないと、ランニングを続けることができないとは思います。
しかしながら、サイクリングも突き詰めれば痛みしかないので笑(イェンス・フォイクトも「it’s only pain」と言ってましたね)、広い裾野からどんどん進んでいくと”ド変態”の世界は存在しています笑。でも、ランニングの方があらゆる層でのフィジカルレベルは上だと思いました。
20代後半でロードバイクをはじめ、30代後半まではストイックに自分を追い込む走りをしてみたものの、今ではそこまで追い込む時間を確保できなくなってきました。自転車はちゃんと乗ろうとすると、けっこう多くの時間が必要になりますよね。1時間だけ確保したとして、自転車で体系的にトレーニングするには時間が足りないと感じます。それに対して、ランニングなら30分でも意味をしっかり持たせやすく、1時間半あれば「何でもできるぞ!」とモチベーションは爆上げです笑
ぼくは学生時代にスポーツ経験をしてこなかったのですが、ロードバイクをはじめてからスポーツで自分を試す楽しみを見つけました。40代になり、コロナ禍を経て、子どもと一緒に過ごす中で、ランニングをセカンドスポーツとして選んだというわけです。フォームの大切さを実感できたり、1つのスポーツへの特異性を獲得しすぎないなど、ある程度の年齢に達した人には良い効果が多くあると思いますので、みなさんもぜひランニングと自転車の併用をやってみてください。