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サドル沼?
サドル沼という言葉があるそうですね。ぼくが自転車を始めた頃にはなかった言葉で、ここ10年くらい、つまりSNS以降に生まれた言葉だと思います。
あくまでもぼくの考えにおいては、結論から言ってしまえば、「サドル沼」というものはないと思います。
そんなわけないと感じられると思うんですが、ぼくはないと思っています。ただ、その人がサイクリストとして過ごしていく時間が長くなればなるほど、複数のサドルを購入していくプロセスを踏むわけですが、その事象に対してサドル沼という言葉を使うことでアピールできるということが発端だろうと思っています。
ぼく自身の経験について書きますね。ぼくはほぼすべてのメーカーのサドルを買っては使ってきましたが、じゃあそのすべてに不満があったのかというとそんな事はありません。20個以上は買ってると思いますが笑、まったく困ったサドルは2個くらいです。そもそも、まったく困ったサドルは最初から買わないからというのも大きな理由でしょうね。最初の頃はサドルの外観を見ただけで合うか合わないかを判別することができなかったですが、5個目くらいからはだんだんとわかってきました。買い替える理由は、「飽きたから」というのは正直なところです笑。ぜんぜん使えますけど、買い替えてました。「別のサドルを使いたかったから」とも言えます。それを、SNS時代に合わせて、そこそこ良い形でのパブリックイメージを残しつつ、フォロワーを集めようとすると、”サドル沼”というんだと思います。
もちろん、まったくダメな2個以外はすべて大丈夫だったのか?というと、そんな事はありません。それぞれに特徴があり、個性があり、使い方がありました。とはいえ、問題ばかりだったのか?といえば、そんなことはありません。そして、自分自身もどんどん変化し、進化していきました。変化する中で、ぼくはサドルに対して「座るところ」から「ペダリングをする際の支えの一つ」と考えるようになりました。
はい、ここでまたまた結論に迫ってしまうわけですが笑、サドル選びを楽チンにするには「ペダリングスキルの上達」がもっとも大きなキーです。初心者のうちはおしりが痛くなりがちなのは、ペダリングが上手ではないからで、ペダルに上手に荷重できないからです。立ち漕ぎをすればサドルへの荷重はゼロになり、おしりは痛くなりません。当たり前ですね。むしろ、ペダルから足を外してしまうと、サドルに全荷重され、おしりは痛くなる可能性が上がりそうです。ペダルに上手に荷重できてくると、漕ぐ、曲がる、止まるがうまくできるような準備がすこしずつ整います。
ゆえ、ペダリングが上手になってくると、自然と使えるサドルは増えてくると思います。
しばらくSELLE SMPでした
その私は2010年前後からずっとSELLE SMPを使い続けてきました。
理由は2つ
・おしりが落ち着くから
・形が変わらないから
です。
1つ目は重要だと思っています。以前に使ったサドルの中ではいくつかおしりが落ち着きにくいサドルがありました。ペダリングが荒れてくるとどうしても前後に動いてしまったりするんですが、SMPは窪んでいるのでその位置にお尻が固定されます。無駄な力がかかった場合に、お尻が多少動くことで腰から上かかる力を逃がすことができなくなるというデメリットはありますが、上半身を使いやすくもなるので、ペダリングを覚えやすい気はしました。
2つ目は、言い換えれば、モデルチェンジがないということです。これはとっても大事です。ちなみに、ぼくがこれまで使ってきたサドルの多く、いやほぼ全ては”今はもう存在していません”。生産が終了しています。これはふつうのことではありますが、サドルということを考えると、ちょっと困る方も出てくると思います。基本的なスタイル、設計、使い方が同じであれば良いのですが、意外とそうでもなく、急にガラッと変わってしまったりするものなんですね。しかし、SELLE SMPのサドルは、ラインナップが拡充されることはあっても、減ることは大変稀で、変わってしまうこともありません。SELLE SMPはイタリア製の高品質サドルブランドで、人間工学に基づいた独自の波状形状と大きな中央の穴が特徴です。これにより会陰部への圧迫を軽減し、長時間のライドでも快適性を確保します。つまり設計が単なる思いつきや発想ではなく、医学的・工学的な知見に基づいているため、基本的に変わらない、変えようがないんです。ですから、ぼくが2010年前後い使いはじめたFORMAやDYNAMICは今でもありますし、書い直すことができます。
今回から使い始めたサドルは
はい、そんなぼくが買い替えたサドルは
ERGON SR Pro Men
です。



これを買う前、実は
・ERGON SM E-Mountain Core Prime Men
・ERGON SR Allroad Core Pro Carbon Men
を使ってみました。
これが良かったんですよ。
あらためてブランド名についておさらいすると、ERGONはERGONOMICという言葉からのブランド名です。「ERGONOMIC」は、日本語で「人間工学に基づいた」や「人間工学的な」という意味です。人間工学とは、人間の身体的、心理的な特性を考慮して、製品やシステムを設計する学問分野です。つまり、「ERGONOMIC」な製品やデザインは、人間がより快適に、効率的に、安全に使えるように設計されていることを意味します。例えば、人間工学に基づいて設計された椅子は、体の形や姿勢を考慮して作られているため、長時間座っていても疲れにくいという特徴があります。
ERGONの製品は他メーカーより多々価格が高い印象はありますが、いずれも質感は価格なりにあり、いい作りをしています。SELLE SMPにもありましたが、製品を設計する際にエンジニアリングに基づいているため、モデルチェンジが起きにくく、製品マトリクスのメッシュも細かく、合理性があり、わかりやすいのが特徴です。アメリカっぽい感じのメーカーですが、ドイツ生まれと聞いて、確かにという感じはします。
ERGONのサドルはいずれもお尻の落ち着きが良く、フォーム、コア、シェルの素材が目的に合わせて使い分けられており、非常に良いサドルが多いと思います。
MTBとグラベル用サドルに使われている「Core(コア)」は緩衝性に優れた特殊なフォーム材です。「コア」を組み込むことで、ペダリングの動きに追従しながら地面からの振動を効果的に吸収する革新的テクノロジー。「コア」サドル シリーズは、腰から背中に優しい製品であることが「人間の背中の健康を考える」ドイツの連邦協会にも認められています。
これがけっこうちゃんと効きます。柔らかさばかりだと底付きしてしまったりしますし、硬すぎても困るのですが、ちょうどいい感じです。跳ねないし、硬くないのがいい感じ。
実際に今回あたらしく導入した「ERGON SR Pro Men」で走ってみたのですが、とってもいい印象でした。
やはり、根拠のあるカタチはいいですね。
イタリア系製品のように、見た目とデザインから発想し、それにあやふやな根拠を後づけされても、もはや50歳近いぼくはウキウキしないのです。「またか」という感じでしかありません。思いつきで描いた形状をいろいろ並べればどれか買ってもらえるだろうと思ってはいないか?と。
サドルは鞍なのであって、椅子でありません。また、前述したようにペダリングをする際に必要な支えの一つであって、座る場所ではありません。そして、過剰な軽量化も不要ですし、3Dプリントというギミックも必要ないと思っています。5万円以上もするサドルなんて…
ERGON製品はそういった派手さはなく、ひたすら実直に製品を作り続けているのがよく分かるブランドです。だから、ぼくは好きなんですよね。メリダに似ていると思います。
ERGON製品については、以前に紹介したバーテープも相当良かったのですが、どうにもロードバイク界隈のメーカーではないので、あまりブランドとして認めてもらえていない感じはします。
ただ、いずれのERGON製品も、まず買ってはずれなしという製品群ですので、ぜひともご注目いただき、次期サドル、グリップ、バーテープの候補として検討してみてください。
ご注文をお待ちしております。