TPU製チューブについて私の見解をまとめます

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最初の印象は「え?え?え?え????」

新しいチューブが発売された、そんなニュースを聞いて、詳細を調べてみると素材が違うのだとありました。TPUだ、と。「え?え?え?え????チューブにポリウレタン使うの???大丈夫なの???」。

TPUは熱可塑性ポリウレタンとも呼ばれます。ウレタンゴム、ウレタン樹脂とも呼ばれる、プラスチックの一種ですから、なんとなく特性を伝える場合、ゴムというより弾性のあるプラスチックですと言ったほうがわかりやすいと思います。

タイヤチューブに向かない特性として
・伸び切ってしまう
・加水分解する
・経年劣化
があります。

OUTWETというアンダーウェアがあります。ポリプロピレンにポリウレタンを混ぜて使うことで伸縮性を確保しています。ポリプロピレンには伸縮性が期待できないので、その機能を編み方とポリウレタンで補っています。ただ、選択を繰り返すことでポリウレタンがどんどん伸びてしまいます。ゴムと違いポリウレタンは伸びたまま戻らないので、ダラ~ンと伸び切ったアンダーウェアになり、寿命を迎えます。MILLETでも同じタイプがありますが、ナイロンを混ぜることで疎水性は下がってしまうのですが、形状維持はしやすくなります。ただ、ポリウレタンは死んでいくので、段々と着心地がゆるくなるでしょう。

衣類の例で使われるTPUはスパンデックスとも呼ばれます。自転車乗りの皆さんが着用されるサイクルジャージの多くはライクラでできており、これがまさにそれです。ライクラはスパンデックスのデュポン社の登録商標で、ヨーロッパの多くの地域ではスパンデックスをエラスタンと表記します。つまり、ジャージはナイロンとポリウレタンでできています。

ポリウレタンをなぜタイヤチューブに使おうという発想したのか、私には謎です。耐油性が高いとか、機械的強度が強いという特徴はタイヤチューブには要求されませんものね。軽さだけが魅力だと思いますが、過去数十年もの自転車のあらゆる歴史を振り返って言えることは「軽さを最前面に出してきた”(自称)画期的な製品”は一定のリスクを含んでいる」ということです。

加水分解もTPUの特性の一つです。エーテル系とエステル系と2種類のTPUがあり、エーテル系は分子構造上の理由で水には影響されないのですが、全く問題ないとは思えません。実際、加水分解したエーテル系TPUを体感しています。

TPUの経年劣化は合成され製造された時点から開始され、高湿度下や温度変化の多い環境では劣化が促進されます。日用品にTPUを使用する場合、劣化破損によってトラブルの原因になることは少なくなく、この劣化は使用する回数には無関係で進行します。ゆえ、いつ壊れるかがわかりにくいです。

もちろん、「いつ何時使い始めたので、〇〇日になったら絶対に交換するぞ」とか、「レースデイだけ使用しょう」ということであれば、やぶさかではない気もしますが、あえては注意を訴えるなら、タイヤやチューブという唯一自転車と人間を路面と繋ぎ止めておく部分に、その手の不安要素を挟んでおくほど、そうして得られるメリットは大きいのかどうか?と考えてみる必要があるのではないでしょうか。

”物は使いよう”であり、適材適所だとも言えますが、しっかりと理解した上で選択されることをオススメします。私はこれを使える、そして使う意味のある人や機会は相当少ないと思うので、TPU製チューブを在庫したり、オススメしたりすることはしておりません。その理由は今回書いたとおりです。