[コラム] 加齢と痛み、あるいは楽しさの継続性について

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ハンドルを上げ、サドルを下げました

先日のライドの前のこと、サドルを大胆に5ミリ下げ、ハンドルは10ミリ上げました。その結果、ぼくの腰はだいぶ楽になりました。そう、痛いんです。痺れるのです。以前は大丈夫だったけれど、最近はダメになりました。若い頃はバイクに身体をフィットさせることでき、そのままいけてしまったけれど、年寄りのフィッティングはより複雑ですので、今回はそんな話をコラムにしてみました。

ぼくは腰痛持ちです

直接お話したことがあるはご存知かもしれませんが、ぼくは腰痛を抱えています。一時期まではまったく問題はありませんでした。以前も激しく身体にストレスを与えれば一時的に痛みを抱えたりしたことはありましたが、かんたんに痛めたり、それが持続することはありませんでした。それほど心配はしていなかったわけです。

現在では痛みは極めてかんたんに訪れます。激しい運動をしなくても起こります。乗っていると、数十分で痺れてきたりもします。酷いときは痛みます。ここまで話すと、「ヘルニアなのでは?」などと病名を当てに行く傾向があるわけですが、ヘルニアではないでしょう。細かな病名を付けようと思えば付くのでしょうけど、付いても付かなくてもぼくの生活は変わりがないわけです。まあ、坐骨神経痛くらいが妥当なのだと思いますが、問題はこの痛みとどう付き合うか考えることであり、その上で自転車に乗ったりする運動をどう続けるか、楽しむかということです。腰痛を同じく抱えた皆さんも同じかと思います。

腰痛になる原因は人それぞれ違うと思います。その上で、ぼくは今回ずばっと言い切ってしまうわけです笑

「原因の根幹は加齢である」と!笑

抗うか否か

人間は周りが頑張っていると、負けん気の強い人ほど巻き込まれて頑張ってしまうと思います。もちろん、それにより何かしらの成果を得られ、伴う痛みを最小にできるのであれば、その努力は継続可能だと思います。それでも「やれるだけやるんだ!」というなら、それはそれでいいと思います。しかし、多くの人にとって痛みを伴う努力というのは、あまり継続できるものではありません。しかもそれが、肉体的な痛みであれば、日に日に動けなくなっていってしまう。腰痛を持っている人ならわかると思いますが、一度痛みが発生すると、あらゆる動きで痛みを感じてしまいます。

いい状態が続かない

腰痛以外の疾病についても言えますが、年齢を重ねるほどに健康的な状態を長続きさせることが難しくなります。それはごく一般的な風邪や頭痛などの諸症状、あるいはそれよりも重たい疾病や腰痛のようなものまで大いに関係がある話でしょう。若い頃はなんの心配もなかったことに、段々と悩まされるようになるわけです。疲労の回復については遅くなるのだという共通の認識がありますが、それ以外のことについても同じように語られることはあまりみられない気がします。

楽しくない

痛みが常態化すると、段々と自転車に乗るのが楽しくなくなってきます。ぼく個人について言うと、学生時代はスポーツに興味を持てたものの、実践する中で挫折したり、段々と距離を置くようになりました。それまで自転車は遊びで使っているだけでした。その後、社会人になってから自転車と再会し、”個人で”スポーツに没入でき、アスリートとしての自分を知ることができたことはとても嬉しいことでした。「自分でもこんなに夢中で頑張ることができるスポーツがあったのか」と思いました。ですから、どんどんつらいことを自分に課していきました。多少の傷みを伴っても、乗り越えることができましたし、それはとてもとても楽しい時間でした。しかし、いつからか楽しくなくなってしまいました。

その原因は、ぼくの場合には腰痛です。もっと早い段階で何かしらの痛みによって自転車やスポーツを諦める場合もあるでしょう。やはり、人間は楽しくないことは続けることができないのだと思います。具体的に言えば、だんだんと踏めなくなってきました。感覚的に言えば、力が入らなくなりました。若い頃は、一生懸命出す力を持続できないというものだったのですが、そもそも力を使うことができない、出せないという状態になります。若い人は信じられないでしょうね笑。ここでいう力とは筋力や筋持久力のことです。筋肉を動かし続けると酸素を消費し、心肺機能に負荷がかかってくると思います。しかし力が入らないので、心肺機能に負荷を与える手前で運動が終わってしまいます。これはなぜ起きるかといえば、つまり”身体が動いていない”ということです。力が入らないのは、体自身が力の入れどころがわからない感じに似ています。筋肉が足りないのではなく、神経に上手く信号が伝わらないことで、筋肉を弛緩させたり、収縮させることが自在に叶わず、可動域もどんどん狭くなっていく状態です。

でも、楽しく乗る時間を取り戻したいですし、それを楽しみたいと思います。そのための試行錯誤をいまも継続していますし、安易に楽しい時間を作り出すためにEバイクを活用しています。

錆びた機械

それは錆びついた機械のようなものです。油をさすと一時的には動くものの、良好な動作状態ではなく、またもとに戻ってしまいます。一度発生した機械の錆は、完全に除去することはできません。そのパーツを丸ごと交換する他ないのです。しかし、人間の体を部分的に交換することは不可能です。ですから、今の状態からいかにして悪くならないか、あるいは悪くなるにしてもそのカーブを緩やかにしたりし、致命的な故障を起こさないように無理せず働かせ続けるしかありません。一番良くないのは無理をすること。その結果として機械が壊れてしまうかも知れません。一度大袈裟に壊れると大変です。錆取りをしようと、整体などの治療サービスを利用したこともあります。それも複数の治療院を頼ったのですが、結局はダメでした。なぜ何がダメなのか、それは自分を治すのは自分でしかないということです。誰かに治してもらうということが、そもそもお門違いだったわけです。そして、自ら無理をすることを前提にし、その無理をした結果として、錆の発生が持続的に起きていたわけです。ゆえに錆を取り、磨いては、「またどんどん動かすぞ!」と思う限り、そのループから抜け出すことができず、むしろ悪いスパイラルにハマってしまうかも知れません。

フィッティングについて

フィッティングがサービス化してしばらく経ちます。現在では、多くの数値化可能なアプリケーションによって、数字読んだり、視覚化できるサービスもでてきました。ある程度身体が動く状態であれば、理想と言える状態を一度作り、その状態を土台にしてトレーニングやライドを続け、さらに良い状態へと導くことができると思います。ぼく自身も以前はそう自覚していました。しかし今は違います。先程書きましたように、日々のコンディションに波がありますから、同じバイクに乗っても同じ結果を得ることができなくなりました。同じ寸法でも、同じように感じないのです。実際に身体が前日までとは異なるので、同じで良いという根拠がだんだんと薄れてきます。

ここでは数値化したり、数値を利用するフィッティングの否定してはいません。加齢を伴う場合、フィッティングの結果を理解し、フォームづくりについて考え、ライド中も無理せず運動を続けることが大切だと思います。つまり、ある一定期間に実現すべきフォームは1つではなく、それに幅を持たせるという考えを持つこと、それとまずは動く身体の実現に向けてこそ努力する時間を割くべきであるということです。動かない機械を動かすためには、サビサビの状態を解消するように努力したり、ベアリングを打ち替えるなどするべきであって、そのままではモーターに負担がかかるばかりになってしまいます。

年齢を重ねてもなお、実際に筋肉や心臓を激しく動かすことに努力する時間を費やしてしまうと、動かなくなりつつある身体の状態に対して不感になっていき、より激しく努力することを目的化してしまうことがあります。プロのアスリートでも聞いたことがありませんか?「ある年齢以上になったら練習量を減らし、やり方を変える必要がある。そうでないと故障する。」と。

ところが、これを若いフィッターはわからないのです。まあ当然でしょうね笑。年齢を重ねた方ならわかると思いますし、若い人でも自分と相対的に若い人間のことを考えてみてください。またそのような悩みというのは、ある一定の年齢を超えるかどうかで大きく認識が異なるケースがあります。例えば、小学生と中学生以上では異なるでしょうし、学生と社会人でもまた異なるでしょう。もう少し上の年齢で言えば、40歳未満と40歳以上では大きく異なるはずです。その年齢が35歳くらいの方もいると思います。いずれにしろ、人間は自分が経験したこと以外について、理解したり想像したりすることは極めて困難なのです。ですから、フィッティングにおいて悩み事や痛みを伴う場合には、自分と同じ経験を持つ人に聞くほうがよいでしょう。

ひとそれぞれ

人間もそれぞれなので、50歳や60歳を越えてもなお、故障せずに激しさを維持する方もいますが、それは特殊例だと思うほうがよいと思います笑。そういう場合、最初から資質をもっているか、それを活かして若年期にスポーツで活躍することができた場合だと思います。身の丈に合わせた程度の努力について、その加減について考えることは、40歳に近づくにつれて考え始めることをおすすめします笑。また、50歳に近づいて、あるいはそれ以上の年齢において、故障を重ねてらっしゃるのであれば、まあ余計なお世話ですが、一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。大きな病名が付いてしまったり、あるいは手術が必要になるなど、日常の生活に対しても支障をきたすほどになれば、たいへんだからです。

詳しくは店頭で

無論ぼくは身体の専門家ではありませんし、レース経験も多くはありません。しかし、それなりに経験は積んでいます。ジャンルは比較的幅広く網羅しており、13時間も山の中をMTBで走った挙げ句、当日は血尿がでるほどやりきったこともあります笑。今ではまったく信じられません。先に書きましたとおり、そこから段々とできることができなくなっていきました。その中でどうすればいいかを考え続けてきました。腰痛に限らず、これらの経験が何かの悩みを抱える人にとっての助けになれば幸いです。ご来店をお待ちしております。