2-3年放っておいた自転車は動くかどうかわかりません

自転車も車両です

聞き飽きた感のある言葉ですが、これを実感を持って、自主的かつ積極的にこの言葉のもとに行動している方は多くないように思います。

・空気が入っていない
・洗っていない

この2点が整備不良車への第一歩ですし、車両であるという意識の薄さの象徴的な所でしょう。というか、ほぼ全てです。目が行き届いていません。

そして最近、新型コロナウイルスな世の中なので”2-3年室内外に放置していた自転車を再度利用したい”という案件が増えています。

「しばらく乗ってない自転車が汚いので、洗ってもらってまた乗りたいから、洗うだけやってほしい」
という要望です。

さて、これについてどう考えたほうが良いでしょうか。

2-3年放っておいたクルマが動くかどうかわかりません

まず、基本的なスタンスはここからはじまります。2-3年は長いですよね。歳をとると”ちょっと前”に感じますが、生まれた子供が3歳になるわけで結構長いです。決して、あっという間ではないと思います。まして、3年以上ともなれば…。

クルマで考えてみましょう。2-3年放っておいたクルマは車検が切れているかも知れません。車検とはクルマを安全かつ安心に、つまり乗車する人にも周囲にいるクルマにも歩行者にも自転車にも安全でいてもらうために”維持管理”しておきましょうということであり、その責務をユーザー自身の責任として負わせていているものです。

つまり、所有者は自身所有の車両を維持管理する義務があり、それを課しているのが車検制度です。おかげで日本にはいい加減なクルマはほぼ走っていません。

これがなければ、また乗ろうと整備不良車を引っ張り出し、事故を起こしたり、人が死んだりする可能性が増えてしまいます。また、個人が整備不良で動けなくなった場合、そのコスト負担は当該個人が負うのは当然としても、社会的に膨大なものになってしまいます。それが原因になり渋滞も多く発生するでしょうから、社会的損失もまた莫大なものになります。

つまり、安全な車だけを世に出すべきで、それ以外があってはいけません。

自転車でも同様に考えましょう

数年放置しておいた、つまり稼働させていない車両(自転車)は安全かつ安心に乗車できるかどうかは誰にもわかりません。「乗ってみてから考える」ということはありえない話だと、先程のクルマの例でお分かりいただけますでしょうか?

ゆえ、「しばらく乗ってない自転車が汚いので、洗ってもらってまた乗りたいから、洗うだけやってほしい」というご要望だけを叶えることはできません。実際に拝見して見ないとわかりませんが、先程の例によれば、”安全”だと言えるかどうかが問題です。

むしろ、多少汚れていてもいいので、ワイヤやチェーンの交換、あるいは簡易な点検を行った自転車のほうが安全だと言えるでしょう。その点検は自転車技師等が行う必要があります。

ちなみに、2-3年放置していた自転車を洗うにはおおよそ5-6000円程度の金額が掛かります。放っておいた時間が長いほど汚れていません?「自分ではキレイにできそうもない」から依頼されるのだと推測しますので、その汚れを落とすには手間がかかります。コストを削減したいということでしたら、洗車はご自身で行うほうがベターです。じっくりご自身でやってみてください。実際にやってみると、何分くらい掛かるかお分かり頂けると思います。

クルマも自転車も人の殺す可能性があります

大げさだと思いますか?

確実に起こり得ることです。新型コロナウイルスだけが人を殺すわけではなく、むしろ交通事故のほうがよほど多く亡くなっており、年齢性別に関わらず、誰にでも牙を剥きます。子供でも死にます。また、その加害者はウイルスではなく、あなたかも知れないのです。私かも知れません。そういう意識を常に持ち、道路を走っていただきたく、またご自身の自転車の安全整備を怠らぬようにお願いしたいというのが、我々自転車技師、自転車安全整備士、自転車安全組立整備士の願いあり、それを皆さんひとりひとりに啓蒙することは我々に課された義務でもあります。たとえマスクをしていても、整備不良車で暴走していたら、それはそれでどうなのでしょう?

私達だけが厳しいわけではありません

「スポーツ専門店だから軽快車には厳しいんだろう」とか、あるいは「ここは何もしてくれない」とか、そういったことは大きな誤解です。

むしろ、リテラシー、倫理観、あるいは義務感の低い自転車店が多くあるだけのことで、そこで自転車安全整備士や自転車技師を名乗る方々がいい加減な車両を世に出していることが、整備不良の自転車を世の中から減らすことができない問題の根源の一つでもあります。

確かに、私達には所有者に整備をさせる強制力はありません。しかしながら、整備不良のままを放っておくことをせず、「このままではいけない」と必ずひと声かけ、整備を促すことはできますし、酷いケースではそれを改善しない場合にはサービスをしないということもできます。

私達はスポーツ車でも、軽快車でも同じように考え、同じように対応しています。その中で、自転車に対するリテラシーの高い人がスポーツ自転車所有者に多いのは必然かと思います。高いものは大事にしますし、”よそ行き”のものほど大事にします。

車両の維持管理をするのは所有者の努めです。ぜひ、ご自身の所有する車両を今一度見直し、まずは洗車からご自身でやってみませんか?

メンテナンスの第一歩は洗車です

我が子の身体を気遣うとき、お風呂で気づくことはありませんか?アザがあるぞ、怪我をしているぞ、と気づくはずです。子供がいない人でも、自分の身体を改めて見るのがお風呂ではありませんか?

自転車も同じです。

洗ってみましょう。見てみましょう。気づくことがあると思います。

気づきがあったら、自転車屋さんへ持ち込みましょう。それを決して、無視しないことも大事です。