IRC ASPITE PRO

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ASPITE PRO(アスパイト プロ)はFORMULAシリーズに加えて登場した新しいクリンチャータイヤです。

IRC ASPITE PRO 新コンパウンドによって全方位に進化したクリンチャーのフラッグシップ(cyclowired.jp)

コンパウンドは新開発となり、これまでよりも転がって、グリップがよく、耐パンク性も高くなっています。重量もカタログ値205グラム(実測は210〜215グラム程度)と大変軽量であり、レーシングクリンチャーとしての性能を全方位的にアップさせたタイヤです。

シンプルに言えば、やれることは全部やった上で、最も良いクリンチャータイヤを作ろうというわけです。

トレッドパターンはセンターをスリック、サイド部分には外側へ向かうほど摩擦係数の高いヤスリ目を採用しており、ウェット用コンパウンドでなくてもウェットグリップを高めています。

東北地方にある自社工場で生産される日本製タイヤは大変精度に優れ、品質も良く、個体差はほぼないレベルまで仕上がっていますから、”ハズレを引く”ことなないに等しいでしょう。

経年劣化に対しても、コンパウンドを練る際に入れるオイル分の中身や内容に気を遣っていますから、いくつかのメーカーのように経年劣化が激しく反映され、”2ヶ月程度でカピカピのツルツルに…”ということにもなりにくいです。個人的には半年程度がおいしく使える範囲だろうと思っています。

またダブルトリプルなどコンパウンドをいくつか組み合わせたタイヤもありますが、経年劣化によってコンパウンド同士が剥がれてしまって亀裂ができることもありますので、個人的には好んで使うことはしていません。

ビード部分にも気を遣っています。販売している状態で緩いタイヤもありますが、その場合にはエアを入れておくことでさらにビードが伸びます。ある日外してみるとダルダルのビヨビヨで、リムから簡単に外れてしまうことがありますが、あれはいけません。コーナーリング中にパンクをし、タイヤが外れて外にすっ飛んでいくライダーを何度か目の前で見ていますが、そうなってしまうでしょう。IRCの場合には、使用してビードが伸びた状態でもJIS規格寸法内に収まるように設計されていますから、新品状態では少々外周が小さくなっています。しかし、ちゃんとしたやり方でインストールすれば、決して難しいことはありません。

太さは24Cとなっていますが、従来の23Cとほぼ太さは変わりません。もともとが太めだからです。その他に26Cも後日リリースされますが、こちらも25Cと思って頂いてよいでしょう。今更太めがいいから変えたのではなく、そもそも太めが有効であり、硬すぎるタイヤを良しとしていないということです。

ウェットバージョンは24Cですが、ウェット専用のトレッドパターンを採用し、コンパウンドはRBCCを採用しています。

以下は、実際のデータを交えながらあくまで私個人の感覚で得られる範囲と言うことでご勘弁ください。

いろいろ使ってみておりますので、その感想です。

IRCのタイヤは他社比較した場合にはコンパウンドが柔らかめなので、私自身は大変好みのメーカーです。硬めのタイヤは転がるより跳ねてしまうため、実際のデータに基づいた上で有効とされるタイヤの変形をともないながら、中高速においてもしっかりと路面をキャッチし、きれいに転がしていくことを考えての結果です。パワフルなライダーや体重が重たいライダーには、変形量が大きく感じるかもしれませんから、空気圧を調整してみることをおすすめします。

個人的には構造によって転がりの軽さを実現するタイヤの方が、空気圧を下げることができ、62〜63キロの私の体重でも快適で軽く、安心して走行することができると思っています。その意味で、今回のASPITE PROは好みではないのか?と思っていました。まずは先入観ですが。

また、200グラムちょいの軽量タイヤでは接地感に乏しいタイヤが多く、これまで使ったものでは継続して使いたいと思うタイヤはなく、その印象もあり、どうなんだろうか?と疑心暗鬼。

実際に走らせてみますと、24Cなのだという表記上からの印象なのか、あるいはコンパウンドによる影響が大きいように思いますが、接地感はしっかりしています。しかし、転がりは軽いです。飛ぶように軽いという危うさではなく、しっかりと路面を捉えつつも軽いという印象で、これまで他のタイヤでは経験したことがないバランスだと感じます。

バイクを倒してみますと、サイドグリップはとてもよいです。他のタイヤと比較しても、レベルが違うくらいのサイドグリップを発揮しました。ウェット用が必要なのか?と言う方もいらっしゃるようですが、私はそうは思いません。ウェットでは路面の摩擦係数が低くなりますので、そこを高める必要があるでしょう。

音にたとえると、”ギュイ〜ン”という感じでコーナーリング中も前へ前へと進みつつ転がるのを感じます。硬めの構造によって踏ん張りながらの際立つエッジ感を発揮するタイヤの場合には、コーナーリング中に外で飛び出す力をタイヤで抑えている反力を感じるのですが、それを上手く推進力に変えつつグリップしている感じがします。

チューブレスタイヤを継続使用して以降では、クリンチャータイヤがサイドグリップ時に発揮するエッジ感がとても受け入れがたくなっている(危うさを感じるので)のですが、ASPITE PROは許容範囲内だと感じます。それでも、転がりの軽さやバランスで言うなら、構造に勝るチューブレスをASPITE PROも含めたクリンチャータイヤが凌駕することは無いでしょうけれど…

サイドグリップに関しては、エアロ効果を狙ってビード部分に付けられたフィンが適度な横剛性アップに寄与しているのではないか?と思っています。実際、サイドフィンに関して風洞実験を行ったところ(施設利用料金が大変高価!)40キロ以下ではほぼ数字的に影響は無いようです。これは他のタイヤでも同じでしょう。モータースポーツに関係する施設の方も「ほぼ変わらないレベル」だと言っていたそうです。

ウェット用もリリースされますが、体重が軽いライダーの場合にはウェット用パターンによる粘りが、構造による軽さを上回ってしまう場合もあると思いますから、26Cを試してみるのも良いでしょう。26Cを使用し、空気圧を少し落として、接地面を増やすやり方で適度なグリップを得る方法です。耐綾は太くなるにつれ丸さが増しますから、サイド部分の接地面は増えて安定します。なにより、丸くなることでセンター部とサイド部の接地面積が変化しにくく、タイヤの潰れも平均的になり、ロール感は大変優れたものになります。下りに自信が無い方は26Cもお試しください。

ASPITE PROはこれまでIRCが持っていた適度や柔らかさを減らしすぎない範囲で、なおかつ最近のトレンドであるしっかりした剛性感を組み合わせたタイヤという印象です。

IRCのタイヤは柔らかくて…という方にも、ASPITE PROは使って頂けるのでは無いかと思いますし、ほぼほぼ限界点に達しているように感じるクリンチャータイヤの性能を1段階アップさせた製品だと感じました。

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