woman in printed shirt holding her bike

[コラム] 消費者が試される、いまのEバイクマーケット

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上記ブランドより「車体は自分たちでダイレクトに売りまくるので、修理店舗として提携していただけないか」とご依頼いただいたので、お断り差し上げました。他のお店にも連絡がいったのを確認しましたが、ぼくが知るお店は皆お断りさしあげたとのことです。

理由は複数あります。まず都合が良すぎることです。自転車販売(小売)の大変な点は売るところではなく、その後です。これは使う側も同じです。買う方も「買ったあとどうするかな?」と考えるのは普通だと思います。

自転車を買ったあとに何が起きるか、そこに複雑な事象が絡み合います。いろいろなユーザーが使いますし、ニーズが違います。コミュニケーションはたいへん複雑ですし、それとともに多くの矛盾も発生します。それらを解決するため、間違いを少なくするために、だからこそ自転車店(現場)が必要なのでしょう。そこへ実店舗に出資せずカバーしようとする都合の良さに同意しかねます。自転車店は何が嫌いといえば、そういうことにぼくらを”単なる数として”利用されることがもっとも嫌いです。

もう一つは個人的な感覚の相違です。クラウドファンディングを使って自転車以外でも「世界最小のジム」など複数の案件を抱えてらっしゃるようで、ぼくのやり方とは違い、功利主義が過ぎるという思いも感じますし、あまりにも顧客のニーズへの認識が軽薄かと思います。

この判断は当該製品に対する攻撃意図ではありません。良い製品だと、あるいはよいサービスが受けられそうだと思われる方は、通販で購入いただければよいと思います。単に、ぼくは製品に関わる”そういう関係性”には関わりたくないということです。よろしくお願いいたします。

何でも”売ること”は可能です

日本は資本主義社会なので、何でも作って、何でも売ることはできます。その意味では、ユーザーはいろいろな判断を迫られます。それはそれでよいことでしょう。しかし、最近は製品を広告する際に、YouTuberやインフルエンサーなどを用いたアテンションの集め方に節操がなく、それしかたくさん売る(儲ける)方法がないので厄介だとは思います。ただ少なくとも、法を守るとともに、安全性と信頼性の担保があり、公正な競争がされた上でですし、大切なことは売ったあと、買ったあとであることは、前述したとおりだと思います。

以前から申し上げていますが、当店では電動アシスト自転車に関する型式認定を大切に扱っており、またユーザーさんが自転車を大切に利用していただくには、自転車店が存在することが欠かせないという立場をとっております。それらの上での論理的帰結により同様の製品への提携や修理もまたお断りしております。どうか、ご理解ください。

自転車以外に関しても言えると思いますが、通販で製品を買うと、お客さんが育ちにくいのです。便利に使うことは否定しませんし、必要なことです。「育てるなど余計なお世話だ、おこがましい」という意見もあるでしょう。飲食店が肥えた舌を願うのも同じでしょうか。しかし、実際に自分で商売をやってみるとわかると思いますし、ユーザーの立場としてもなんとなく察するところがあるのではないかと思います。

”サスティナブル”とカッコつけたことを言い易い世の中ですが、それらなしに持続可能性は得られないでしょう。実店舗でちゃんと納得して購入し、維持管理をしてこそ、持続可能性が開かれるだろうとぼくは考えています。そうでなければ、コスパを優先し、カンタンなものを好み、無駄を悪と認識することになってしまうでしょう。2倍速で見る映画に、何が残るのでしょう?最近ではコスパに加えて、タイパなる言葉も作られました。しかし、人生は無駄があるから面白くなるのではないでしょうか?ポチッと注文し、サクッと届くなにかに、そこまでの想いが宿るとは思えません。