[コラム] 登るとは?

登る理由は軽いからなのか

たまには?心に残ることを言っておきたい、そんな面持ちでおります笑。というわけで、今回はタイトルどおりの内容です。記事は短いものになると思いますが、同じような内容を今後の言い続けていくと思いますし、わからないことや疑問には店頭でお答えします。道具による楽しみを見出す方向性は時代背景にも裏打ちされるはずですし、総合的な流れによる変化や影響もあると思います。

「登るには軽い自転車が必要である」ということは、一見して正しいようですが、すべてにおいて守られるべき最優先事項かというと、そうではないと思います。つまり、「どんなことを犠牲にしても軽い自転車を手に入れることが上りをラクにするために最優先すべきである」ということは間違っているでしょう。以前から、ぼくはそう思っていましたし、そのように主張してきました。今回、新たしいSCULTURAに乗った際、そのことを大変わかりやすく感じることができましたので、やはり間違っていなかったのではないかと思っています。登るにはいくつかの方法があるからです。

残念ながら、ディスクロードはリムブレーキ仕様よりも軽くなりません。それは事実です。チーム仕様のバイクは6.8キロぎりぎりにまでできますから、どっちでも変わりはありません。しかし、自転車を買う多くの人は6.8キロにまで、あるいはそれ以下にするほどの予算を費やせるわけではありません。つまり、多くの人が買う自転車は重たくなります。それはとても残念であるかのように思えます。たしかに数字が増えてしまうことは、かつての考えからは受け入れられないかも知れませんし、軽いことは第一優先事項であるとの考えにおいては、性能が低下したという認識にもなるのでしょう。しかし、自転車は売れてくれないと困るわけです笑。ここまではリムブレーキモデルをディスク仕様として開発した際にわかったことでした。さぁ、そこからが開発のスタートです。重量が重たくなったけれど、いかにして魅力的な乗り味にするか、です。

ディスクブレーキ専用モデルであること

新しいSCULTURAは今回初めてディスクブレーキ専用モデルとなりました。リムブレーキモデルのことは考えずに開発されたということです。REACTOは昨年デビューしたモデルから同じようになっており、性能やフィーリングが劇的に変化しました。ディスク専用モデルにすることにより、自転車を構成する10本のパイプの役割はこれまでと異なる役割を与えられることになりました。これが、新しいSCULTURAの乗り味に大きな影響を与えているだろうと感じます。

New SCULTURA Vはどんな自転車なのか

SCULTURAに限らず、自転車は軽さにより登るというイメージがあると思います。また、そのように主張しているものもよく見かけます。実際、SCULTURAはそれをセールスポイントとしてアピールしていましたし、それ以外の多くのクライミングバイクもそうであった(今もそう)と思います。しかしながら、先程申し上げましたとおり、チームモデルはこれまで同様の6.8kgでも、我々が買うレベルのSCULTURAは多少重たくなってしまいます。しかし、SCULTURAらしいセールスポイントが無くなってしまってはだめです。

ぼくは以前から、クライミング系の軽すぎるバイクは乗りにくいのだと主張してきました。これ以上の”単純な軽さ”を究めてしまった場合、SCULTURAもそれ以外もとても乗りにくいバイクになってしまうのではないか?という懸念がありました。それは過去の幾度となく訪れた軽量バイクブームにおいて、十分すぎるほどわかっていることです。しかしながら、MERIDAの開発陣はさすがに優秀で、そんなことは十分に承知していたようです。今回のフルモデルチェンジによって、その点が大きく変わったと思います。

ぼくは自転車で山を登ることは、自転車をヒョイと高いところへ持ち上げることとは違うと思っています。思っているというのは、実際にいろいろな自転車で走ってきた経験からそう感じたということです。例えば、同じ重量ならば同じように登るかどうか、それが違うだろうと思います。また、重量が軽い自転車が重たい自転車より、必ずしもよく登るように感じるわけではないということです。自転車はあくまで路面の上をタイヤが転がることで前進します。前に進みます。そして、それは人間を動力として運動します。ですから、人間が運動をスムーズに行いやすいかどうかは大切だと思います。

もちろん、予算を費やすことができ、軽くすることができるなら、軽いほうが良いとは思います。ぼくはまったく、軽くすることを否定してはいません。しかし、それは”とにかく何でもいいから軽いほうが良い”ということではないと、先程も申し上げたとおりです。そのことを新しいSCULTURAは教えてくれます。

本当に今の時代に対してアクチュアルなバイクに仕上がっていると思います。もう、「自転車は軽いから登るのだ」と認識される時代の終わりが始まったのだと思います。ぼくはきっとこういう方向に行くと思ってはいたものの、人間は実際に目にしたり、感じたりしてみないことには、ゼロから想像することはできないものです。だから、乗ってみてたいへんに驚きました。軽さを理由にリムブレーキモデルを選択することは自由です。しかし、ご自身の用途にとって、どちらにメリットがあるのかを冷静に判断することがとても大事になると思います。「力のない人にほど軽さが必要である」という声を聞いたことがあります。これも一見するとただしいようですが、ぼくは「その軽さを実現することで、力のない人がより力を発揮しにくい自転車にしてはいませんか?」と問います。明確に体重も軽く、筋肉量も少ないのであれば、チームモデルに乗るのは走るために合理的な選択だとは言えません。

新しいSCULTURAは、ディスクロードは重たい、軽くできないという事実の前で、「じゃあどうする?」ということから数年かけて開発された最新世代のバイクだということです。これが必然なのか、偶然の産物なのかはわかりませんが、軽くないというところからスタートした開発によって、素晴らしい自転車が出来上がりました。そういった登りにおいての、軽さではなく、しっかりスムーズに前に進む性能は、平坦における万能性や汎用性というかたちでも発揮されることは、自転車のフレームに詳しい人であれば想像していただけるだろうと思います。つまり、今回の新しいSCULTURAは、本当に前によく進むし、乗りやすく、漕ぎやすいということです。

「乗って楽しい」と感じてもらえる自転車づくり

ただ、ここまでの作り込みができるメーカーはほんとうに少ないだろうと思います。それはどういうことかというと、ここまで割り切れるのはメジャーメーカーに限られるということですし、ちゃんと合理的な開発を行うメーカーは多くはないということです。あくまで誰かのコピーであったり、別の要素を優先するケースもあります。MERIDAは多くの人に「乗って楽しい」と感じてくれる自転車づくりをモットーとしていますし、他のバイクを見ていただいても感じられると思いますが、合理性は大きなテーマとなっています。そのため、革新性や非合理的なギミックが用いられることはありません。

今後も変わらずリムブレーキモデルをラインナップし続けるメーカーが、その理由に軽さを列挙する場合、また同時に、リムブレーキモデルとディスクブレーキモデルを同じ型で作るということは、前世代的であるということです。ぼくはそれらの自転車に対して、ダメだとは言いません。ただ、開発の目標や前提条件がかなり違うので、乗った印象が全く異なってくるだろうということです。その場合、「ディスクブレーキモデルはリムブレーキモデルより多少重たくなっちゃいますね」とネガティブに語られ、ディスクブレーキに最適化されていないがため、乗った感触も異なってくると思います。

この意味がちゃんと伝わるのかどうか、その自信はありませんが笑、軽量化に対しての空虚感は、レースバイクですら今後どんどんマシていくのではなかろうかと思います。それは費やせる予算が継続的にあることを前提にした楽しみ方でした。また、自転車が軽くなることやパーツをアップグレードすることは、有効的で多大な実効効果が得られなくても、買えるから買っていただけですから(僕自身がそうでした)、自分自身が自転車に乗る目的や合理性を見つめ直す良いチャンスなのではないかと思います。あたらしいSCULTURAは、軽くしなくてもとてもよく前に進みますし、楽しく乗ることができます。レースバイクらしい俊敏さ、そこに乗りやすさと安定性を、ディスクブレーキ専用にしたことで大きなジャンプアップを図ることができた自転車になっています。

このような自転車が出てくるかも知れないという予感は、ぼくの中ではSCULTURA ENDURANCEが2021年にデビューした時からあったので、やはりなという感じです。また、某メーカーからやたら軽いバイクが発売された際にも、なるほどと解釈しました。

あたらしいSCULTURAは、伊豆にあるMERIDA X BASEにすでに試乗車として用意がありますので、ぜひ乗りに行ってみてください。すばらしい乗り味を体感していただきたいと思っています。
https://www.merida.jp/x-base/use/