基本的に圧入は一度切りにしたい

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今はBBで圧入式が多くなったのですが、圧入と言えばそれより前にヘッドパーツです。

インテグラル系の類が出るまで、ヘッドパーツはそのカップと一緒にヘッドチューブへ圧入されていました。

圧入する場合には、ヘッドチューブの内径に対してはやや大きなヘッドパーツという公差が必要になります。

写真のように相手方がスチールであれば、その内径の拡がりは最小限に留まりますが、それを抜いてしまった後に再度圧入を行う場合、一度目よりも明らかに緩いことを作業者は理解します。

相手方がスチールではなくチタンであったり、アルミであったりしますと、そのダメージは大きく、圧入され摩擦している部分に隙間ができ、音が発生したりすることがありました。これは数年の使用によって発生することが多くあります。

ですから、クリスキングという全くメンテナンスを必要とせず、泥だらけの環境下でも5年保障という驚異的な耐久性を誇るヘッドパーツは、そのジャンルでの究極の逸品として評判を得ました。新品時に圧入し、もう外さないで良いという意味の一生もの。当時、ヘッドパーツは”キングかそれ以外か”と言われたほどです。

話はBBに戻ります。

現在は多くのフレームのBBシェルはカーボン複合素材になっています。CFRPはP、つまりプラスチックです。相手方がプラスチックであれば、アルミやスチールを圧入しては行けないだろうなぁ…と多少の知識があれば気が付きそうなものなのですが…

実際には、カーボンシェルに直接ベアリングを圧入したり、アルミ製ボディのBBを圧入するのを見かけます。あるいは設計上そのようにしているケースがあります。

もし、ユーザーがあまり距離を乗らないライダーであり、雨も乗らず、自転車へのダメージも少なく、オーバーホールも2〜3年間隔で良いようであれば、その圧入されたベアリングやBBを取り外すチャンスは多くないでしょう。また、毎年のように乗り換えるレーサーであれば、そんなことは気にしません。しかし、多くの距離を乗り、自転車を深く楽しむライダーはベアリングやBBを取り外すチャンスがより多く必要になります。

現在ではワイヤを交換する際にBBの着脱が必要な場合もありますので、その度にフレーム側へダメージを与えるような作業は好ましくありません。何度か行うことで、”音鳴り”が発生しやすくなることは容易に想像可能でしょう。

ですから、SRAMやSHIMANOでは純正BBを樹脂製としています。

最初は”安っぽい”と感じるのですが、その合理性に納得せざるを得ません。無理してアルミ製にする合理性は存在しないばかりか、無駄に高価にもなってしまいます。樹脂同士であれば、フレーム側へのダメージは最小限に留めることが出来ます。「何回まで平気なの?」という質問については答えかねます。乗り方やメンテナンス状態によりかなりの幅があるからです。

最後に、当店で唯一オススメしているサードパーティ製BBであるウィッシュボーンは圧入を行いません。

これをオススメするのは圧入しないからです。何度着脱を行なっても、フレーム側へダメージを与えません。たくさん乗って、多くのメンテナンスを必要とするホビーレーサーやブルベライダー、あるいはシリアスライダーにピッタリ(というか必須の)のBBでしょう。