Velonの目論見とは

この記事は約 3 分くらいで読めます

面白いレースシステムがはじまります。

UCIのシステムやルールに縛られていると、儲かるレースシステム構築は無理だとハッキリしていますし、ASOのシステムはASOしか儲からないので駄目ですし、Velonがもともと引き継いだと思われる 『World Series Cycling (WSC) project』 の流れの中にあると思われます。

Velon設立にあたって出資した11のワールドチーム(設立当時)
 BMCレーシングチーム(アメリカ)
 エティックス・クイックステップ(ベルギー)
 ランプレ・メリダ(イタリア)
 ロット・スーダル(ベルギー)
 オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)
 チームキャノンデール・ガーミン(アメリカ)
 チームジャイアント・アルペシン(ドイツ)
 チームロトNL・ユンボ(オランダ)
 チームスカイ(イギリス)
 ティンコフ・サクソ(ロシア)
 トレックファクトリーレーシング(アメリカ)

◆Velonに加わっていないワールドチーム(設立当時)
 AG2R・ラモンディアル(フランス)
 FDJ(フランス)
 IAMサイクリング(スイス)
 アスタナプロチーム(カザフスタン)
 モビスターチーム(スペイン)
 チームカチューシャ(ロシア)
 チームユーロップカー(フランス)

Velonが設立された最も大きな理由はチームに入ってくる収入の安定化です。

現在、放映権料はチームに分配されず、レースで得られる賞金も少額です。チームはスポンサー探しに毎年奔走し、それも数年で途絶え、チーム存続の危機を幾度となく乗り越えなくてはなりません。ゆえ、同じ運営母体会社であってもチーム名はコロコロ変わり、選手は右往左往させられますし、一瞬でチームごと吹っ飛ぶ事件は毎年複数発生します。

チームがスポンサーから獲得した予算の多くはスタッフの維持に多く回され、選手の給料の優先順位はそれより低くなります。なぜなら、経営母体が抱えるスタッフを最優先し、スポンサーを失った際には予算獲得に走ればチームを続けられますし、出走するレースのクラスやカテゴリーを変更すれば(つまり小規模化したりすることで)、それに合わせた選手を集めてくればいいことになり、ゆえ選手はいくらでもいるという状態になります。これがロードレースの実情です。

ツールで勝つことは、先日発表された韓国でのエタップやさいたまクリテへの巡業強制参加権の獲得でもあり、相当額のスタートマネーを受け取れる権利でもあります。つまり、勝つことだけでは成り立たないシステムが現在のロードレースのシステムであり、ツールこそがと言われるのはその為でもあります。

一方で、ドメスティーク達(アシスト職人)はレース中も辛いばかりで、走行中も契約でも追い詰められるは多く、檜舞台に上がることもなく、選手個人への評価はチームからの主観でしかないという偏ったものですから、個人の努力に対して正当な報酬が支払われていません。むしろ、ワールドチーム未満では給料の未払い問題や契約の不履行は常識的に存在しています。映画「疑惑のチャンピオン」の中でフロイド・ランディスが言っていたことはまさにそれでしょう。どちらかと言えば、人脈や繋がりなど社会的コネクションが重視されるだけに、強者が弱者を支配しがちな文化社会でもあると言えます。

ゆえ、レースが儲かっても、チームや選手は儲かりません。

Velonはそういった選手達の弱い立場を改善し、強く、稼げて、子供たちが憧れるロードレース文化へとこのスポーツを成長させることを目的としています。

現在は、ASOにより『魅力あるツール・ド・フランスへの出場権を与えるのであとは自己責任でチームを運営して下さい』 という感じで全体が成り立っています。

Velonにはフランス籍のチームが加わっていないのは、ある意味で”ツールシステム”への対抗策を繰り出していると言えるからでしょう。また今回の「ハンマーシリーズ」の日程も、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネに重なっているのはそういう理由背景があるものと思われます。