名パイプの復活

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コロンバスのジーニアス、10年以上前に廃盤になってしまったパイプセットです。

スチールというとクロモリというのが代名詞になっていますが、このジーニアスはクロームモリブデン鋼ではなくニバクロム鋼です。最新のパイプはどれも厳密にはクロモリではないんですが、それら全体を”クロモリ”とウォークマン的に言うのも仕方ないところではあります。

このパイプを使ったフレームで有名なのはデローザのネオプリマトでした。”でした”というのは、それを採用していたのは95年頃から数年の間で、2000年代に入ってからは”そうでなくなった”ので全く別物になってしまいました。その頃までのデローザはメルクスの築いた栄光と符合するようなレーシングバイクで、ホビーライダーを寄せ付けぬようなピュアレーシングバイクでした。今とはだいぶイメージが違いますね。それ以降のデローザは飾り気と趣味性ばかりになってしまっていますからね。

クロモリをブランド扱いする場合には、その乗り味は「柔らかい」「乗り心地が良い」と口を揃えますが、当時のネオプリマトにそれは当てはまらないでしょう。メルクスが乗っていた様な力強さ、バネ、スチームたる乗り味。いやこのフレームに限らず、あるいはどの素材であっても、その時代の最新スペックであり、当時の現役レーサーが跨っていたフレームというのはピュアレーシングなのです。今のカーボンのトップモデル同様に。

その当時のレーサーが乗っていたフレームは決して柔らかかったのではなく、スチールで最高のバイクを作っていたのは間違いありません。もちろん、剛性に対しての考え方は違います。

ニバクロム鋼とはニッケル、バナジウム、クロムを添加したスチールで、力強いバネを生み出します。

このコロンバスのジーニアスが東洋フレームとともに復活を遂げます。

東洋フレームからの要望により、ジーニアスが復活します。

ジーニアスを知る人が聞いたら「!!!」と感激をする内容ですが、そうではない方にはむしろ是非自分のバイクとして作っていただいて、乗れば乗るほどに「!!!」という感動を味わって頂きたいと思っています。

スチールで自転車を作りたいというと、飾り気が強いフレームが好まれたり、それを無意識に進めることもよく見かけます。それらは「クロモリらしいです」と。それの行き着く先はチタンやステン、自転車として大事な走りより、見た目やイメージを重視した結果でしょう。

もはや、所有欲を高めるような目的を持った金属フレームばかりですから、そのようになるのも仕方のない所ではありますが、今は亡き”走る鉄”に乗ってみれば、スチールという名前から想像できない良い裏切りを感じると思います。

私が東洋フレームを好むのは、当時のデローザらしさとも符号する気がします。

イタリア御三家と言えばピナレロ、デローザ、コルナゴ。この中で最も飾り気がなく、質実剛健で、レーシーなのがデローザだったと思います。今のように派手なカラーリングは一切なく、全モデルが単色塗りでした。塗装も薄っぺらくて、ウーゴの頑固さをなんとなしに感じたものです。今はむしろ、もっともラグジュアリな存在になっていますからね。時代が変われば生き方を変える必要もあるということでしょう。

東洋フレームもまた、飾り気やおしゃれという言葉からはかけ離れた、いい意味で地味なブランドでしょう。形式や歴史に拘る(囚われる)のではなく、新しい挑戦と自分達のやり方への信念を貫きつつも、押し付けがましくなく、大変精度に優れたフレームを作り続けています。

今後、東洋フレームではコロンバスのジーニアスを使ったフレームがラインアップされる予定です。

さて、どんなバイクに仕上がるのでしょう。
ちょっと鳥肌が立ちますね…