現状のこの事態は相当に深刻です

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先日あったUCIとASOの対立。

私は以前からASOが構築した”ツールシステム”には、違和感と異論を唱えてきましたが、それがいろいろな形で表面化したようです。

ASOがツールを含む全開催レースを2017年のUCIワールドツアーから外すと発表
http://www.cyclowired.jp/news/node/186778(cyclowired.jp)

そして、Cycligtimeの記事です。

ASOとUCIの対立、ツール・ド・フランスは2017年度より格下げ開催へ、UCI主導の改革に壁、ワールドツアー改革VSレース主催者協会、分裂を招くASOの姿勢に疑問符
http://www.cyclingtime.com/modules/ctnews/view.php?p=21164

UCIはいつの時代も?悪者サイドなんですが、他に叩く相手が居ないともいえます。ASOに”楯突く”人間も居ないわけですから。

今回の問題は”単なる利権争い”ではなく、記事の中にある通り
「ワールドツアー改革に関しては誰が利益を得るかという部分で、ASOを中心とした一部主催団体が譲らなかったことが原因となっている。」
という部分です。

このような対立構造には
「またかよ」
そんな声がほとんどではあるんですが。

単なる利権争いではない側面が実はメインコンテンツでして、これまでの歴史すらちゃんと語るメディアが日本国内ではほとんどありませんから、恐らくは「面倒なことだから見ないようにして、レースだけ見ているのが幸せ」だと認識する方がほとんどなのではないか、と。

私もロードレースが大好きです。

しかし、好きなのは選手とそこから生まれるストーリーであって、そのメインアクター達が悪者にされ、大した収入も得られず、あるいはセカンドキャリアは霧の中なのであれば、それは由々しき問題です。また、選手の立場が弱すぎることで数々の悲劇を生んだことは御存知の通りでもあります。

多くの自転車関係国内メディアではツールに関してお祭り記事しか見当たりませんが、海外メディアではそうではありません。ネガティブな問題もしっかりと掘り下げ、議論した上で意見しています。また、経済関係のメディアではその多くがASOのやり方やあり方に対して懐疑的であったり、批判的な内容がほとんどです。

アモリ家がファミリーで独占して支配しているのはツールだけではなく、私達が楽しみにしているレースの多くを含みます。言えることは、ロードレースやツールはアモリ家ありきではなく、選手ありきであって、観客あってのことで、そこに支配されなくともこれらのレースは楽しいだろうということです。

UCIは前会長時代には、悪事を飲み込み、それをまさに利権の為に使い、ASOと手を取り合って懐をあたためてきたわけですが、現会長になって以降はその対立は利権争いではなく、スポーツビジネスの作り方の変革と、パワーバランスの均衡化という目的に変わっています。

以前の対立では、同じようにASO主催レースはヒストリカルレースとして開催されましたが、たしかその際に選手はこれといった意見を言わず、歴史あるレースに勝つだけだみたいなキレイ事を言っていた記憶があります。今回こそ、改革の方向性に舵を切らないならば、ツールであろうと「走らない」とハッキリいって欲しいところですが、厳しいでしょうね。特に3賞ジャージとトップクラスの選手は、さいたまを含むプロクリテ興業でそこそこ稼がせてもらってますから。”興行主”に文句言うのはこれまでの歴史から紐解く常識では考えにくいと思います。

ツール・ド・フランス揺れる-大会を陰で仕切る大物女性に反旗(2012年6月15日、bloomberg.co.jp)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5JHGN6JTSE801.html

ツールを私物化していること、その収支は全く不透明であること、その利益はサイクルロードレースを目指す選手の育成に一切使われていないことは、本国やヨーロッパでは知られた常識であり、その上で楽しんでいるというところ。

ツール・ド・フランスの現実(2009年07月22日、無用独語)
http://dokugo.seesaa.net/article/124465749.html

ツール・ド・フランスというビッグビジネス(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2009年7月号)
http://www.diplo.jp/articles09/0907-3.html

2009年にはチームに300万ユーロがバックされたと書いてあるのは、全チーム合計ということでしょう。そうであればブリュイネールの証言との整合性がとれますね。

今回の記事にもVelonがそういった”分配金”に嫌悪感を示しているとあります。そもそも、”プロチーム”であるならば、独立採算が当然であって、赤字ならチーム消滅はもちろんのことです。しかし、レース開催からチーム運営のいたるところまでをスポンサーマネーと補助金だけで運営し、選手には大した額を渡さず、飼い殺すことに対して、いつもは悪役の?ティンコフさんも呆れ顔です。まぁ、ティンコフさんもどうなんだろう?って発言や行動はあれ、ビジネスマンとしては一流です。その立場からみて、現状のプロロードレース界の価値に未来ないことは、当然分かるわけです。むしろ、私ですら。

ティンコフが2016年シーズン終了後にチーム売却へ?、「スポンサー資金頼み自転車界の改革を提案したが、協力を得られないことでこれ以上は時間の無駄」古い体質の自転車界に警鐘
http://www.cyclingtime.com/modules/ctnews/view.php?p=21161

> 余剰金がある企業の道楽にすぎないということだ
まさにです。そうでしかありません。

事態は相当に深刻ですね。

ティンコフほどの資金を投入してくれる企業がまだあるかどうか…。TREKが獲得したのはセガフレード。世界に600店舗ほどあるコーヒーショップですが、コーヒーショップですよ…。600店舗だと餃子の王将に負ける店舗数です。珈琲は好きだからという立場では楽しみですが、結果はいつもの通りでしょう。それにあのTREKがコーヒーショップしか見つけられないっていう現実…。

> 放映権や、移籍市場導入、グッズセールス、観覧席を用意しての観戦など、地元と運営者側、そしてチームが収入を得られる具体的で綿密な計画書をティンコフは提案してきたが、「たかが一オーナーが口を出すな」とばかりに自転車界はそれを拒否してきた
残念ですね。ビジネスとして成功させ、スポンサーがその広告効果を得て、選手を育て、そして守るのがプロリーグじゃないかという声に対して、現状のサイクルロードレース界は拒否したわけです。

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