トレイルを守るために

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最近の心配事と、ローカルのトレイルへの思い(Toxトレイルさんのブログより)

仲間のトビがFBでシェアしていた内容に同感しましたので、ブログでアップすることにしました。

少々長く、説教じみた文章になりますが、是非ともご一読頂けると幸いです。特に、MTBに興味がある方以外にも読んで頂けますとうれしく思います。

当店では「MTBはじめませんか?」とお誘いしています。購入して頂いた方には、まず自然のトレイルへとお連れする場合はほぼありません。それは意図してやっております。むしろ、レースの方が初心者には向いています。ロードの方からすれば、”レースは危険だし、まだ早い”と思われるでしょうが、MTBではそうではないと思います。

自然のトレイルに入ることは自転車に乗りに行くのではなく、山に入るということです
ロードに乗っている方にも想像してもらいやすくするには、こういう言い方がよいと思って説明しています。郊外で舗装路を走っている時に道を外れて一歩脇の山道に入ると想像して下さい。果たしてそこは人家のスペースなのか、自治体が管理するスペースなのか、あるいはということでまず気遣いが発生すると思います。なおかつ、例えば富士山の周りを走っていて、一歩でも樹海に踏み入れた時には不安を感じると思います。

つまり、道路上であれば安心感があり、そこは走っても良いという証が明確に認知されているからだろうと思います。自然の山に入るという事は、まず山に入るという心の準備と装備品をそろえなくてはならず、それなりにお金もかかりますし、その上で自転車は”お荷物”になるかも知れないという不安を重ねて抱えます。これが初心者の方が感じる不安だろうと思います。若いうちはそこを勢いで行ってしまうのですが、ある程度物事が分かる年齢になり経験を積めば、その不安は大変よく分かります。

一方レースでは、自分たち以外に走っている人もいる事で心の不安は少し減りますし、ある程度の範囲のスペースをループして走るので遭難する事もほとんど無いでしょう。ゆえ、レースは敷き居が高いと思われがちですが、実は初心者に向いている面もあります。もちろん、カテゴリーを飛び越すようなエントリーはマナーの上でご法度です。MTBレースの場合、ロードのように集団で走るということもなく、またそうしなくてもレース内容や質が下がりにくいので、他の人と絡んで転ぶようなケースは稀です。なおかつ、レーススピードも低いので、転倒したとしてもアスファルトで転ぶより軽傷ですむ場合がほとんどです。人と戦うより、己と戦うような感じに近いので、ヒルクライムレースに出るくらいの敷き居の高さだと思います。

もちろん、レースという事で興奮して、”自分の限界を超えてしまう”ことで激しいケガを負う事はありますが、それはMTBに限らずだろうと思います。

ゆえ、当店ではまず自宅近辺や当店から自走で行けるスペースへと一緒に行き、楽しみ方を見てもらって、やってもらって、その次には有料で楽しめる常設トレイルや草レースのエンデューロクラスへのエントリーをご案内(というか一緒にエントリー)しています。

キッチリ言ってしまえば、どなたかが管理しているトレイルであっても、実はグレーゾーンであることを否定できません。その土地を所有する方が”ダメ”と言ってしまえば、それ以降使える事は無くなります。クロになったスペースがグレーに戻る事はほぼなく、それこそ所有者の世代交代でもない限りは黒のままでしょう。また、シロ(つまり走っても良いスペース)は有料トレイル以外にありません。そこは”MTBを始めたい、興味がある”という方には購入前にご説明しています。

”埃まみれ、泥まみれになって、野山を駆け回る楽しさ”はMTBの楽しみの根源ではあると思いますし、それを散々やった私にはそれを”してはいけない”と言う権利などありませんが、だからこそそれを少しでも分かった上で”大人は”MTBを楽しんで頂きたいと思っております。

どんなスポーツで、”どんな背景において、世の中に認められているのか?”を理解せず、その範囲を超えて行動してしまえば、その証拠は状況証拠であってもネット、つまりSNS等を伝って”一瞬で”全世界へと伝播してしまうのが今の時代なのです。

ここ最近ではMTBを始めたいという方も増えておりまして、当店でロードを購入する方でも「次はMTBを…」と企んでいる方(笑)も多くいらっしゃるのですが、必ずしも”自然の山に入る”ことを全ての方にマッチするわけではないと思いますし、また”そうしないとMTBを楽しめないわけではない”と思います。ロードと違い、同じコースを走っても季節や日が違えば違う楽しみを与えてくれるスポーツなので、同じスペースへと毎回走りに言っても楽しめます。つまり、永遠にトレイルを探し続けるというものではないですし、毎回スペースを変える必要性はありません。ある程度安心感のある有料トレイルやレースだけでも十分にMTBを楽しむ事は出来ると思います。スキーと同じような感じです。バックカントリーがMTBでいう自然のトレイルですから、スキー場を一歩出てしまえば”全ては自己責任”となります。ほとんどの方はスキー場が設定する立ち入り禁止テープを超える事は無いだろうと思います。”雪山は怖いから”と思われるからかも知れませんが、季節にかかわらず山はそれなりに危険なのです。

それに山の中でケガをしてしまえば、そこで立ち往生する事になりえます。冗談ではなく”生きて帰れない”かも知れません。どなたかが管理されているスペースであっても、そこで”死者が出た”ということにでもなれば、もう使えなくなってしまうでしょう。

MTBでレースのように?”攻めて走る”とケガをしてしまいます。自分の中の安全マージンをしっかりと確保し、担保した上で”生きて帰る”のが自転車に限らない”山の中で絶対のルール”だと私は思っています。

自転車が壊れたらゴミ袋に入れてでも帰る事が出来る状況とは全く違います。山に入る装備や準備をした上で、自転車がお荷物になる割合を低くしないように、乗って走る技術を身に付けるように努力し、完璧な整備を心がけなくてはなりません。一緒に山に入る人は仲間であり、”パーティ”です。一人のミスはパーティ全体を道ずれにする恐れもあります。

MTBはこういった状況を理解して頂き、それぞれの方にマッチした遊び方をキープする限りでは大変楽しく遊べるスポーツです。常に集中力を発揮しながら、地形や環境に合わせて自分を変えていく楽しみはロードでは味わえないものです。仕事も何もかも全て忘れて、山と自分でする対話は最高の贅沢だと思います。

私は自分の店を通じて、今後もMTBをより一層頼んで頂けるようにと願っておりますし、それを独立した理由の一つなのですが、決してそれほど”自由”なスポーツではないということもご理解頂きたいと思います。決して、「MTBを広げたくない、トレイルは限られた人のものだ」と主張するわけではありませんので、その点は重ねて申し上げます。

ただのショップの人間が勝手を申し上げますが、どこかで思い出して頂ける事を願っております。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございます。

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