165mmのその後

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クランク長を165mmに変更したその後
先のポストで紹介したPOWER2MAX NGecoのクランク長は165ミリです。変更する前のR8000も同じく165ミリでした。私の身長は165センチ、脚長は760ミリです。

以前、カンパニョーロコンポーネントユーザーだった際、165ミリクランクから170ミリへと仕方なく変更したものの、慣れてしまった問題なかった…のですが、さらにトレーニングを本格的に開始するとその差に悩むことになりました。

当初、短いことで”回しすぎる”傾向が表れ、それによって疲労したり、ネガティブな症状を得ました。しかしながら、短い期間に順応することができ、今では全く違和感なく使用し続けることができています。ただこれは170ミリに戻すべきということではなく、変化がなかったということではありません。

きっと、170ミリに戻すとかなり大きな変化を得ることでしょうね。

高ケイデンスへの勘違い
高ケイデンスとはケイデンスが高い状態です。もちろんその通りです。しかし、ケイデンスを上げることを目的にしたものではなく、結果的に高くなったというのが正しい順序です。高ケイデンスはケイデンスを上げることが目的ではなく、出力を上げ、それの維持を容易にすることを目的とした手段です。その為の適切なクランク長ですから、短くしたことで表面的なケイデンスの”数字”を上げられること(上げやすいこと)にかまけていてはいけないのです。

ちなみに、高ケイデンスは出力を上げるための手段ですから、自分の最大有酸素出力に対して高くない状態を長時間維持したい場合には、間違った方法だと言えます。ゆえ、長い時間のライド(ロングライド全般)では、ケイデンスは高すぎないことが適しています。

高ケイデンスにしない(しなくてもいい)場合、クランク長を適正よりも長い状態でも問題ないだろうという意見もあるのですが、165ミリに慣れた私の意見としては、”どのような目的においても、適正より長くすることで得られるあらゆるメリットが見つからない”と言えます。つまり、良いことなしです。

長いほうがより大きなパワーが出るというのは誤り。
以前は”長いほうがより大きなパワーが出る”と言われていたのですが、これは全く間違いであることが分かっています。とは言え、その実験は1983年に行われたものなので、”今まで何してたの?”っていう感じですけど、自転車では特に保守的な考え方(軽いほうが速いとか)が支配しているので仕方ないかもしれませんし、それくらいクランク長を決定する過程は複雑だということでしょう。

1983年にOmri Inbarが行った実験では22歳〜27歳の13人の被験者に対して、125ミリ〜225ミリまでのクランク長においてシッティングで30秒間の平均とピーク出力を測定しました。この中で最適なクランク長は164ミリと166ミリまであることがわかり、最適な長さは足の長さに依存する事がわかった。また、そこから5ミリ短い場合と長い場合のデータはそれぞれ0.77%、1.24%しか変わらなかった。

また150ミリより短いか200ミリより長い場合には大きなパワー変化はなく、125ミリと225ミリの両端では2-5%の出力変化しかみられなかったというものです。

また、2002年にMcDanielらにより行われた研究ではサイクリングの代謝コストは出力、ケイデンス、ペダル速度に大きく依存していることを明確に示し、145/170/195ミリのクランク長による代謝コストの差は殆どなかったとしています。

さらに2017年、Ferrer-Rocaらはより長いクランクが関節の屈曲を増加させ、股関節と膝関節の両方で必要とされる運動範囲を指摘し、より短いクランク長を選択した方が怪我の受傷リスクを減らすことが出来るとしました。

「出力にも代謝にも変化なしなら、長くていいじゃないか」と思われそうですが、実際には身長が低いほど、脚長が短いほど、股関節の可動範囲を広く利用する必要があります。先の実験でも身長差は考慮されていませんが、同程度の身長であろうと思われます。しかしながら、身長が低いほどに関節が柔軟であるという法則はなく、個人差や経験差に応じます。つまり、適正よりも長いクランク長を使う場合には、やはり苦労が多いということになるでしょう。

個人的な感想としては、”明らかに出力維持をすることが楽”だと言えます。

大事なのは回し方
大事なのは回し方や踏み方なので、ただ単純に短いクランクを取り付けてしまえば終わりではなく、むしろ違和感を解消できずに元に戻すケースが多いようです。フォームやペダリングの正解は1つではありませんが、理想的な身体を動かし方やその準備には共通点があります。それを無視して、闇雲にペダルを回すことで正解が得られるなら自転車も簡単なのですけどね(笑)