Eバイクにおけるバッテリーマネジメントについて

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長く使うために

自転車は本来?修理し続けて使えるものです。それは実用車であればなお言えることですが、スポーツ車であっても一定期間、あるいはパーツの入れ替えによって寿命をまっとうする時間は長くできます。

Eバイクの場合、その中でキーになるのはバッテリーの寿命だとも言え、最近のクルマに関して気にされている事象や技術と同じです。

振り返ってみれば、駆動用バッテリーは容量を大きくすることを第一としながら、鉛蓄電池 → (ニッケルカドミウム電池)→ ニッケル水素電池 → リチウムイオン電池と漸次的に進化を遂げてきました。次は全固体電池が待っていますが、実用化はまだもう少し先になりそうです。

バッテリーとの最初のお付き合いはミニ四駆でしょうか?笑。あの頃はニッカドでしたね。あるいはラジコンやサバゲの世界をご存じの方は、私などより全然詳しいだろうと思います。リポを当たり前のようにつかってますよね?もちろん、技術者の方はもっとですね。

最初の市販リチウムバッテリは1970年代初頭に発売されました。当時は再充電が不可能で、再充電可能なリチウムバッテリが登場したのは20年後の1991年、ソニーが最初の市販リチウムイオンバッテリを発売しました。リチウムイオンバッテリーはエネルギー密度が高く、自己放電が低率で、メモリ効果をほとんど示さないなどの長所を備えています。

数年でだめになる?

Eバイクに対して否定的な考え方の人は「Eバイクは価値がすぐに低下する。数年で”陳腐化”するし、バッテリーが数年で駄目になればゴミになる」と言います。お店の方がそう言われたりするのも目にしますが、果たしてそうでしょうか。

まず、陳腐化についてです。各々の方が楽しめる範囲において、その自転車の性能がいかようであろうと、その体験価値が陳腐化することはありません。それはバッテリーに関しての扱いがよほど悪いか、知識があまりないかのどちらか、あるいはその両方かも知れません。

バッテリー寿命の”減少の過程”を陳腐化と呼ぶのであれば、ペダルバイクで10年程度経過したものも、もう交換パーツなどなく陳腐化するだろうということになります。しかしながら、現在のバッテリーは大変高性能であり、SHIMANO STEPSに関しても同様であるため、数年、あるいは大げさに「2−3年でだめになる」ということは起き得ないものです。それを説明します。

寿命を過ぎてもまだ使える

SHIMANO STEPSのバッテリーは1000サイクルもの充電回数により70%の寿命をキープするように設計されています。定格容量が70%です。

1サイクルの定義には色々なものがあります。

  • 0から100%充電 ⇒ 1サイクル
  • 0から50%まで充電し、後に継ぎ足しで100%まで充電 ⇒ 1サイクル
  • 30%残量から継ぎ足しで100%充電し、30%使用したあと100%充電 ⇒ 1サイクル

一般に、寿命と言えば年数で表されるのが通常ですが、バッテリーの場合はサイクル数で表されることがあります。それでは、サイクル数とはどのようなもので、寿命とどのような関係があるのでしょうか。サイクル数とは、充電と放電をワンセットにした場合どのくらい充放電を繰り返しできるか回数で表したものです。つまりサイクル数が多いということは、蓄電と放電を繰り返し多くできるということになります。そのため、充放電の回数が少なく済む大容量のバッテリーほど、サイクル数という観点から見ても寿命が長いということが言えます。なお、充放電を繰り返した結果、メーカーカタログ等に記載されているサイクル数を越えたとしてもバッテリーが全く使えなくなるというわけではなく、先程申し上げたような性能劣化をする程度にとどまります。

バッテリーは寿命として設定しているものの、それが過ぎてもまだ使えます。家庭住宅用蓄電池になりますと、3000サイクル/6-10年などが一般的で、中にはもっと長い高性能高コストなバッテリーもあります。ポイントは寿命になると一気に落ちるのではなく、充放電を繰り返すうちにだんだんと目減りしてくるということです。

やってはいけないこと

意外と知られていませんが、バッテリーをフル充電状態で長期間保管すると劣化が進みやすいのです。フル充電はセルにストレスがかかっている状態で安定的ではありません。リチウムイオンがセパレーターの反対側へ移動したくてしょうがない状態になっています。早く放電して安定したいのです。つまり、フル充電放置はよくありません。

SHIMANO STEPSの場合には、先程の1サイクル定義の中で
0から100%充電 ⇒ 1サイクル
としています。

つまり、そのくらいバッテリーに負荷のかかった状態で寿命を決定しています。

クルマの駆動用バッテリーでは、容量の0%から100%までのすべてを使うことはありません。例えば、下限を10%、上限を90%などというように設定します(この場合、SOCは80%となります)。SOC(State of Charge)とはそのバッテリーの充電率のことです。下限の設定は完全放電による劣化の防止、上限の設定は急速充電器による過充電保護のためです。機器の信頼性と安全性を向上させるには、電力消費の慎重な管理をし、ユーザーに正確なバッテリ残容量値(SOC)データを提供する機能、およびバッテリセルの信頼性のある保護が必要です。熱の問題は興味深い難問を引き起こします。

シマノの場合、0から100%まで充放電できるようにしていますが、個人的には使用者によるバッテリーマネジメントの改善を考慮すれば、20-90%程度とするほうが良いように思います。保管する場合には30-80%程度の間が最適です。これはスマートフォンでも言えますので、出来るだけ長期間にわたり良好な状態で使用したい場合には、20-90%の間で充放電されると良いと思います。

また完全放電が良くないということはある程度ご存知かと思うのですが。”良くない”のを程度問題で言いますと、”相当良くない”というレベルです。一度くらいは良いだろうというものではなく、一度でも止めたほうが良いと私は思います。

しかしながら、現実的な運用の中で

ノートPCでもスマートフォンでも、バッテリーの寿命が長くなった中で、キーボード、液晶など本体のハードそのものが劣化し、バッテリーが大丈夫でも使いにくくなったりもします。あるいはCPU性能の進歩により、実用限界を越えてしまうほど相対的な低速度化をするケースまであります。スマートフォンで2年程度というのは確かに納得感のある期間の目安にはなりますし、ここ最近長寿命化しているパソコンでのバッテリーの高寿命化が望まれるのもまた理解できます。クルマではそのリセールバリューや乗車する方の安全性にも関わるがゆえ、20万キロ(つまり一般的な車の寿命)乗ってもトラブルフリーなバッテリー寿命が一般的になるほど高性能化しています。

その中で自転車では、今後、より長寿命化が望まれる場合には、機器側でのバッテリーマネジメントの導入はEバイクの将来に望まれるとは思います。しかし、それは製品単価とのバランスになりますし、実質的にスポーツバイクとしての利用においての使用期間は10年以上に及ぶことは稀であると思いますので、現在のサイクル数で大きな問題なく全うできるのではないでしょうか。

また、Eバイクにより実現できるアクテビティやそれを享受できる人口の幅まで考慮しますと、ペダルバイクこそ自転車であるとするのは実に狭い世界のマニアックな主張に過ぎず、今後、自転車というツールを社会に向けてアピールしていくのに欠かせないモノになるだろうと思います。Eバイクを否定される場合、それも全て捨てるのだろうか?という疑問も湧きます。

1サイクル/週のペースで充電した場合、18年必要ですから。その半分程度まで寿命が縮まったとして9年です。9年後に、同じアクティビティを行っているかどうか、現役バリバリで行っているとして同じ自転車に乗っているかは、これまでの経験上大変疑問です笑

E-Projectでのバッテリーマネジメントの現状

たしかに、Eバイクでのバッテリーマネジメントは利用する際の鍵となると思います。現状ではDi2システムのセットアップなども行うSHIMANO E-PROJECTアプリケーションでは、Eバイクのバッテリーについてのユニットログを取得することができます。

以下は私のeBIG.NINE 400のユニットログです。
充電回数はたったの2サイクル、SOCは100%です。元気ですね笑

ちなみに、私はSTEPSのバッテリーがどこ製かメーカーを知っていますが、なるほどそれは安心だと言えるものです。

同じバイクばかり乗る方とそうではない方、使い方によって異なりますので、半年くらい経った段階で店舗へお持ち込み頂き、ユニットログの参照をされるとともに、ご自身が利用される中でできるバッテリーマネジメントの改善について考慮頂くことをオススメいたします。

たとえばこんな道具

私が使っているのはこんなものです。タイマー付きのコンセントジャックで、決めた時間の中だけ通電します。プログラムスケジュールするためのものですが、利用は可能です。同じようなタイマーを使ってみるのはいかがでしょうか。