心のリミッターを切ってはいけない

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この時期、あるいはお盆時期にかけても、多くの人が山方面は走りに行くと思うんですが、気をつけて欲しいのは事故です。

「わかってるよ」
という声も聞こえますけど、それでも起きる可能性があるのが事故です。

でも、”事故は起きるものだ”とは言いたくありません、”犯罪はなくならない”というのと同じで、”絶対に起こさないんだ”と決めて、それでもなお起きることはありますし、多くは不注意によります。

私個人について言えば、その日のメンタルとフィジカルの状態を走り出す前にも、走りながらでも常に自己監視し、今現在どこまで無理がきくか?を推し量ります。”無理”というのはあくまで言葉上言うだけで、危険を許すレベルではありません。”集中できるかどうか”に意味合いは近い感じです。それでも、スピードを出す/出さない論同様にして、自分がどう感じるか?が基準値でもありますから、「それでも不測の事態が起きた場合には対応できないだろう?」と言われればそうなんですが、私個人の考えを言えば、「じゃあ、走るの止めたほうが良いよ」と思います。

自転車では山を下るのも、どこを走るのも危険なのです。

反論を受けるだろうと思いますが、自転車ってそういうもんです。下りだけじゃありません、平坦でも危険です。ある程度は危険なものです。速度が何キロまでが安全だというのではなく、最初に言った様にその日の体調や気持ちがどの程度で、どこまで出来るかを考えて、調整することが一番大事です。危険へのセンサーの敏感さと、その感情への対処方法が事故を遠ざけます。

そう、最後のリミッターは心。

速度制限装置=リミッターとなります。ブレーキを掛けるかどうかを決めるのは心です。たまに聞く「怖いと思ったことないです」というタイプには2種類いるんですけど、本当に上手い人が極々少数、多くは単なる無感覚か無知であるでしょう。

下りが怖いと思う人は、危険が差し迫っていることを感じる正常な状態。だから、その気持ちや感情だけをエイヤ!と解き放ってはいけないのです。それをやると事故を起こします、いつか絶対に。

私も下りで怖い思いをしたことはありますが、自分がその時出来る範囲であれば普段は怖くありません。これはみんな同じだろうと思います。じゃあ、その限界値に差があるのはなんで?ということなんですけど、それはこういうことです。

怖いものは怖い。

怖いものは怖い、あくまでその人の根源的な感情ですから、おばけが怖いとか、虫が怖いとか、高いところが怖いのと同じことです。このレベルで自分と戦っても勝てません。フィジカルを絞り出す気合は有効ですが、恐怖感に打ち勝つにはもっと冷静な対処が必要でしょう。自転車の場合には、その人の乗車姿勢や自転車のセッティングを改善することで怖さを少なくしたり、そのリミットを引き上げることはできます。

車で言えば、ボディはボロボロ、シャシーもガタガタ、スピードを出すとグラグラする車が怖いのと同じです。自転車は乗り手の理解が深まるほど、その安定性を発揮することができます。

セッティングとはディスクブレーキにしましょうとか、Di2にしましょうということではありません。それは多少の不安を解消するのには役に立ちますが、恐怖感のリミットを上げる(つまり上手になる)のには役立ちません。むしろ、上手になる事を避け、”とりあえず、今だけをラクにする手段”でしかありません。ハンドルバーの高さを上げるのも、下ハンを握らないのも同じ、スキルアップを避けていては”安心”は訪れないでしょう。

怖さの理由を分解するその方法については、ここでは省きます。今回はそういうことを言いたいわけではありません。気になる方は、ウチのお客さんになって下さい。いくらでもお教えします。一緒に走れば上達します。

とにかく無理はしない。

今すぐにスキルアップを提供できるメソッドはありません、すぐには上手くなりません。これは私の考えですけど、どんなスポーツでも”そのスポーツにおいてそこそこの上達を得るまでには同程度の時間が必要”だと考えるからです。どのスポーツでも同じだと思います。何百時間か何千時間か分かりませんし、それはそのスポーツをその人が始めるまでに耕した畑(他スポーツでの経験等)によっても異なりますが、どれだけパワーメーターを使って強く踏めても、私はその時間の積み重ねが足りないことにはビギナーのままだと思っています。

免許取り立てのウチはどんなにパワフルな車を手に入れても、ドライバーのスキルは運転する時間の積み重ねによってしか養えないのと同じではないでしょうか。車ではクラスが上のレースに出るには、最低限度必要な年数は確保され、それを飛び越えて昇級することはできない仕組みですが、自転車では”脚さえあれば”上に行ってしまいます。

集団走行でも同じです。前走者の後ろに入ることでスピードはイージーに上げることは可能ですが、自分自身が無理をしていいかどうか、リアルタイムに冷静に判断をし、しかし熱く漕ぎ続けるのです!

その状態で力強く踏めるからと無理をする、あるいは下手な自分にイライラする、それが事故につながる可能性になると、自分の経験から思っています。

ゆえ、無理をしないように、心のリミッターを無理に解除しないように注意して欲しいと思います。