シマノ vs パイオニア

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昨日はシマノテクニカルセミナーの東京大会ということで、関東のディーラーさんは「うりゃーシマノパワーメーターじゃー」となっているのでしょう。

私の個人的な結論は、既に当ブログを読んでいただいている方には透けて見えていると思いますけど…

昨日今日のショップブログでは「大きな山が動いた」「遂にきた」「待望の」などの様々なキャッチと共に紹介されているシマノパワーメーターですが、私の方はいつもと同じ「正直スタイル」なので、いつもの感じでいきます(笑)

詳しくはこちらのブログにも書かれているので、折角なので(面倒なので)貼り付けておきますね(笑)それに加えて、私の方でも項目別に比較してみます。

価格
シマノの方が安いという覚え方でいいのは「デュラのクランクを買うつもりの人」だけです。アルテグラにパイオニアの左右セットを取り付けますと155136円でほぼ一緒だから、シマノの方が安いと言われそうですけど、それはどうでしょう?シマノの方で出る”左右バランス”はガーミン等で表示するような一般的なパワーメーターで出せる左右バランスの事なので、パイオニアであれば片側だけの装着で実現可能です。ゆえ、現在開催中のキャンペーンを利用されれば、59800円で取付可能ですから圧倒的に安く出来ます。

ユーザー数
これはもうパイオニアに軍配があります。後出しジャンケンが強いかと思いきや、この世界はシェア優先です。パワーメーターのメーカーを乗り換えるほど熱心な方もいらっしゃいますが、ごくごく稀。今後はシマノも増えてくるでしょう。

独自機能
シマノにはこれが一切ありません。「今後、機能は拡張されます」とは言っていますが、予定は未定。いや、独自にコンピュータを開発する気が全くないので、ガーミンがシマノに合わせてコンピュータを改良しない限り無理でしょう。つまりその機能を利用するのは、その時発売される最新式のガーミンを買う追加コストは必須というわけですね。

パイオニアはペダリング効率、フォースベクトルが表示できる唯一のパワーメーターです。セルフコーチングをするには欠かせない機能で、「速さより効率を追求したい」人にはこれが必要です。大事なのは結果的に出ている出力ではなく、”どうやって出しているか?”だからです。

ヘッド部分の問題
独自機能の項目で記述しているとおりですが、シマノが独自機能を持つにはこれの開発が条件として欠かせません。パワーメーターは計測機器であり、それを人間の目に分かりやすく出力してくれるのはヘッド部の役割です。つまり、どんなに多くの種類のデータを取得しても、ヘッド部の機能に制限されます。だからこそ、”パワーメーター界の覇権を握るためには専用のヘッド部は必須”と言えます。だから、「ヘッド部を出さない」と聞いて、「どんだけ売る気あるんだろう?」と思いました。

機能面での存在理由
シマノにはこれが一切見当たりません。もはや、”シマノであること”くらいでしょう。「これまでパワーメーターなんてカスリもしなかったのに、昨日今日から急にシマノパワーメーターを推してきた」場合には要注意ですよ(笑)ものすごい商売人か、機能を知らないかのどちらかですかね。

着脱の容易さ
パイオニアは左右のクランクにセンサー等が追加されているだけの、見た目通りの状態なので、自転車への取り付けに関してはこれまで通りです。左右は繋がっておらず、マグネットの取り付けは別にして、クランクの取り付けには何も特別なことは必要ありません。左側を取り付け出来ない場合があるのは確かですが、それをマイナスポイントとしては考えていません。右側は問題なく取り付けできるでしょう。

シマノにはまず専用工具が要ります、さすがシマノです(笑)そして、バッテリーが内蔵されている上に、左クランクから生えているコードを挟んで切ったり、傷つけないように注意しながら、左側のアームを取り付けてシャフト内へコードを接続するんだそうです…。「コネクタを濡らさないで下さい」とも言われましたし、”コードを切ったらオシマイ”だそうです。バッテリーは交換不可能ですし、コードも交換不可、左クランクアームのみの発売もありませんので、”切ったら買い替え(笑)”ですし、濡れていて繋いでショートしてもオシマイ、やだこれ…。

本来クランクの着脱は、自転車を組み立てる作業の中ではそれほど難しいことではありません。また、これが出来るようになるとクランクやチェーンリングの清掃、あるいはフレーム側の清掃などがしやすくなります。にも関わらず、専用工具が増え、着脱にデリケートな作業が必要になれば、正直”何か特別な機能や事情がない限り”はリスク要因としてしかなりえないでしょう。

バッテリー
既報の通りシマノは充電式です。満充電するのに3時間を要し、300時間使用できるようです。しかし、”身の回りのものの中で充電するガジェットがまた増えた”のには変わりがありません。私の普段の生活で管理している充電池は一体何個になるのか…。それと、電池が寿命を迎える(セルが死ぬなど)と修理は不可能です。パイオニアは180時間ですが、CR2032電池で稼働するのでいつでも交換は容易です。

なお、「ボタン電池は突然切れるのでNG」と記載されている方がいらっしゃったのですが、間違いです。現在のファームウェアでは、SGX-CA500に電池交換のタイミングを知らせる「バッテリーアラート機能」を搭載していますので、”突然”ではありません。むしろ、充電式バッテリーが途中で切れてしまうと充電できないままになりますし、ボタン電池の交換管理を出来ないユーザーの場合、内蔵バッテリーを切らすだろうと思います(笑)

左右別売と段階的導入や活用方法
ここは決定的に違うのですけど、アルテグラクランクにパイオニアの左右セットを取り付けると、155,136円なのでシマノと変わらないし、シマノならクランクはデュラだからそっちの方がいいと思ったあなたはもう一歩です。パイオニアは正式に薦めていませんけど、左右セットで購入したあと、もう一つクランクを購入するか、あるいはお持ちであれば、2台の自転車にそれぞれ片方ずつ分けて装着する事ができます。シマノはセットで買ってセットで使わないといけないですから、2台目の自転車にはもう1台買う必要があります。「2台目が必要だろうか?」という意見が出るのも予測しますが、パワートレーニングを初めてしまうと、トレーニングで乗る自転車全てに取り付けておきたいとなるものなのです。

まだまだ理由はありますが、貼り付けたブログに書いて有ることに近いので省略します(笑)

というわけで、

発表翌日ではありますが、「シマノのパワーメーターを買う理由は全く見当たらない」です。

何か欲しくなる理由として、私が見落としていることがあれば教えてください…

最後に
「じゃあなんでシマノが出すんだろう?」について考えてみましたが、UCIがメカニカルドーピング抑止の仕組みとしてパワーデータの提出を求めるという話がありますので、それに利用されたりするのではないか?とか、チーム側が余計なコストを支払わなくていいとか、オールシマノな幾つかのチームに使わせるためとか、そんな感じじゃないかと思うんです。

海外でのパワーメーターユーザーはほぼ全員がレーサーです。アマチュアも含めて、レースを想定した走行をしない人はほぼゼロ。だから、より合理的で、出力値さえ出ればOKとなります。プロレーサーもそれに入ります。パワーが出ている人より出ていない人は遅くしか走れないですから、とにかくパワーが出ていることが前提になるのがレース。出ていないのに効率が高くても役に立ちません。また、パワー値を基にして練習量やコンディションの管理も行います。

だから、”セールスポイントがなく、横並び”なのも理解できるかな、と思います。

パイオニアが”フォースベクトル”というセールスポイントを打ち出したのは、日本のユーザーに向けた機能だからです。

日本でパワーだけ出れば良いユーザーは極少数です。レース層が少なく、多くはロングライド層。日本のレース層を狙っているだけでは、パイオニアがパワーメーターを作りづづけることが出来ないでしょう。販売数を増やすには、日本のユーザーのリアルなニーズを基にして開発をする必要がありました。そこで開発したのはペダリング効率であり、フォースベクトルです。

実際、これを使ってペダリングを修正し、効率を上げている方はいらっしゃいます。

しかしながら、パワー(ワット)だけを見て、それができるでしょうか?